NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は6月12日、TBSテレビと共に5G SA(Standalone)における通信安定化技術である「ネットワークスライシング」を活用した実証実験に成功したことを発表した。

実証では中継車を利用しない簡易な設備構成に対しスライシング技術を適用して、地上波放送に求められる映像品質の確保を実現している。また、テレビ中継の際に起こりうる混雑環境や、緊急時において中継設備が十分に準備できない状況を想定し、移動基地局車、Starlink、スライシングを組み合わせることで、安定した通信が提供できることを確認したという。

  • 実証の構成

    実証の構成

実証の背景

放送業界では放送設備のない場所から中継車を利用しテレビ中継を行う場合に、スタッフを多数配置する必要があり、即応性が求められる場面では人員の確保が難しいといった課題がある。

一方、活用が進んでいるモバイルIP中継機器を利用したテレビ中継においては、都市部や観光地などの混雑したエリアで通信が不安定になる場面もあり、中継に必要な安定した通信品質の確保が課題となる。また、電波が届きづらい山間部などでは通信環境の提供が難しい。

これらの課題に対し、通信安定化技術であるスライシングと移動基地局車およびStarlinkを組み合わせて利用することで、さまざまなシーンで安定した通信品質を確保しつつ、中継車を必要としない柔軟なテレビ中継を実現する。

実証の概要

今回の実証で移動基地局車、Starlink、スライシングを組み合わせた構成で実施した。疑似的に混雑環境を作り、放送用カメラとモバイルIP中継機器(LiveU)、および映像伝送ソフトウェア(Live Multi Studio)を利用して動きのある被写体を撮影し、TBS放送センターへ映像伝送を実施。

また、同時に撮影現場で送り返しシステム(LiveBack)による映像の確認、コミュニケーションアプリ(T-Qom)によるリアルタイムコミュニケーションができることを確認した。

実証の成果

移動基地局車、Starlink、スライシングを組み合わせた構成では、中継利用で目標とする上り伝送レート(Uplink)を98%で維持し、クリアな映像を送ることに成功した。なお、スライシングを利用しない場合は30%だという。

  • スループットの比較

    スループットの比較